疾走 重松清

重松清の小説にしては表紙がグロいのでなんとなく読んでなかったんだけど、最近読書モードが復活しているので読んでみた。嫌われ松子の一生とは別の感じで不幸てんこ盛り。いじめあり、犯罪あり、セックスあり、教会とかヤクザとかも出てきて、若干花村萬月風?*1思春期のやるせない感じや、からだと心がおもうようにならない、もやもやした心のうごきやらがなつかしくておもしろかったよ!
俺は、好きな人が出来た時、色々な折々に『こいつに殺されるほど愛されたいもんだ』とか『俺はこいつを殺せるほど愛せるんだろうか』とか、ぼんやり考えたりする。別に殺人・自殺衝動があるわけではないし、出来れば幸せに、長生きしたいと思っているんだけど、そういった強い結びつきへの望みがこの本にもあって、その望みの強さがこのお話の救いなのかな。
あとは、港町の再開発の立ち行かない感じなど、まちそれぞれの雰囲気が、とても懐かしい感じで(といっても俺は東京生まれの東京育ちなので、懐かしいはずもないんだけど)、夏の終わりのちょっと涼しい蒸し暑さ、どこまでも続く田舎道、全力疾走したいような、そんな気分になりました。
全然報われない暗い話なんだけど、色々印象に残りました。映画もSABU監督でやってたんだよね*2。おもしろいのかな?普通に重松清好きな人より、テイスト的には花村萬月とか、あと『リリィシュシュのすべて』とか好きな人ならおすすめかも?

*1:花村萬月の小説には、ヤクザとキリスト教とセックスがかならず出てくる

*2:http://www.shissou.com/