あすなろ物語(ASIN:4101063052)井上靖

明日はヒノキになろうと思いながら一生あすなろのままっていうあすなろの木にひっかけた少年〜青年の話。やや井上靖の自伝的テイストが入ってるらしい。
10年位前に読んでとても心に響いたんだけど、改めて読んでみた。やっぱしなんか心に響くんだけどその正体がいまだ良くわからない。
『名作!この本を読んでみんなあすなろの木の様にがんばる心を持て!』
てな感じで取り上げられがちな本だけど、全体的に漂うのは
『でも結局ヒノキにはなれないんでしょ?つかそもそも俺あすなろですらないし』
てな感じの劣等感。主人公の12歳から30歳くらいの中の様々な人生のタイミングを切り取った話たちなんだけど、結局の所主人公はうじうじとなにも決断できないで流されていってる気がするし。教科書的な名作かどうかは割と疑問。
でも、なんか優しいんだよね。
どんなに偉そうに見える人でも世の中のほとんどの人はは主人公みたいに劣等感を持って、他人は完璧に見えて、どうせ俺なんて、って思ってる。そんな悲しい人生の中、出会いや別れそれ自体はとても面白くて、ヒノキになれなくても、それはそれでいいのかも?生きなくちゃ、なんて思わされます。